こんにちは。社会幸福祉士の古今屋です。
何もすることが無い、つまり暇な時間があれば、皆さんはどの様に過ごしますか。
読書したり、SNSをしたりソーシャルゲームをしたりと時間を有効活用できるように工夫していると思います。
では、認知症のある方にとって、何もすることが無い時間はどうでしょう?
自分が今いる場所、時間、周りにいる人との関係、といった状況が理解出来ない(見当識障害)中で、ポッカリと空いた時間があると、自分は何故ここにいるのだろうと、悩みます。しかし、幾ら考えても答えは忘却の彼方にあり、混乱し、不安が膨らみます。また、認知症になると記憶力の低下から新しいことを覚えることに困難さが生まれます。未来に向かって建設的に行動を起こすということが難しいのです。
今回は、実際に私が現場で行い、入居者の方々に好評の脳トレをご紹介したします。
認知症のある方には、どんな活動がいいのか?
では、認知症のある方にとってどんな活動が良いでしょうか?キーワードは、「ストレスが少ない」「集中できる」です。
ストレスが少ないレクとは?
まず、「ストレスが少ない」についてですが、認知症のある方は、脳を使う活動を行うと、非常に疲れやすいです。脳が疲労すると、不機嫌になったり、せん妄症状等が出現する場合もあります。なので、何か作業を行う際には、ご本人が負担なく楽しめるものを考えて下さい。
作業を行って頂く際には、適宜、声をかけ、疲れていないか、苦痛になっていないかを確認するようにしましょう。
また、お一人おひとりの得意な作業、好きな作業を把握しておくことも大切です。作業中の様子を良く観察し、感覚で覚えるのではなく、記録に残すことで、職員同士の情報共有も図れます。
集中できるレクとは?
次に、「集中できる」ですが、前述した様に過度のストレスは悪影響を招きますが、何も考える必要の無い活動は意識が逸れてしまい、再び忘却の彼方にご本人を連れて行ってしまいます。
例えば、家事の中でも料理はメニューを考えたり手順を考えたりと頭を使うのに対し、掃除や洗濯等は比較的頭を使わなくても体に染み付いた習慣で行える作業です。これを手続き記憶と言います。
この様な活動は、考えなくても体が覚えているために認知症になっても失われにくい能力ですが、その分、集中できない面もあります。
もう一つ、作業活動を提供する上で、考慮してほしいことがあります。それは、作業を提供する介護員の負担を少なくすることです。こちらについては、別のページで改めて説明させて頂きたいと思います。
認知症のある方が楽しめる脳トレ
以上を踏まえて、私がオススメする脳トレは
塗り絵
こちらは脳トレの王道ですが、やはり塗り絵は楽しみながらも、指先を使って細かい部分を塗ったり色の濃さを調節するために強弱をつけるといった作業をすることで巧緻性アップのトレーニングになります。
また、様々な色の組合せを考えることでイメージや創造力を司る右脳を刺激します。
ただし、認知症のある方の中には下絵が何の絵なのか認識できない、色覚異常によりどれを塗ればいいのか認識できない方もいます。
そんな時には、枠線の色だけを先に援助者が塗って枠線と同じ色を塗ってもらうことで解決できます。
数合わせ・絵合わせ
様々なレクリエーションをしていると、レク用品や作品がが増えて置き場所がない、保管場所が乱雑になるなどの悩みを感じることはありませんか?
こちらの脳トレは、保管も楽で何度も使いまわしができ、費用もほとんど掛からず、とってもエコです。
内容としては、数字や文字、絵などがマス内に書かれた台紙を使い、その上に同じ数字や文字、絵の描かれたカードを置いていくゲームです。(※下の画像参照)
数字であれば、1~20をマス内にランダムに書き、そこに同じ数字を置いてもらいます。同じ数字を探すことで空間認識能力の向上や目の動きを鍛えるビジョントレーニングの効果も期待できます。その方の状態に合わせて、数を増やしたり減らしたりします。計算が得意な方には、台紙に計算式を書き、答えの書かれた数字カードを置いてもらう方法もあります。
紙さえあればすぐに作ることができる上に、何度も使えます。保管場所も省スペースで大丈夫。
私の施設の入居者さんもいつも行っていますが、集中して取り組んでいます。数の多い数字合わせを行う時には、数人の入居者さんが協力しながら行い、全てそろうと、みんなで万歳して喜ぶ姿も見られます。また、極端に頭を使う作業ではないために、ストレス無く行えます。
手書きで十分。クオリティーを上げるより、楽しめる様な工夫、バリエーションを多くする方が喜んでもらえます。
数字以外にも、漢字、画像、イラストを使ったものも人気です。野菜や果物、料理の名前が書かれたボードに画像をプリントしたカードを乗せていくのも楽しいです。「これおいしそう。」「食べたいなー。」等と盛り上がるので、会話のきっかけや、好みを知る機会にもなります。
型抜き と 壁画作り
次は型抜きです。花びらや葉っぱ等、季節に合わせた型紙を準備し、鉛筆で型を取ってもらいます。こちらも指先を使うことで巧緻性のアップや空間認識能力の向上等の効果も期待できます。
色画用紙を使ってもいいですし、白い紙を使い、型を取った後に、色を塗ってもらうことで、より味わいのある作品ができます。
上の写真の様に、型紙は牛乳パック、台紙は古いカレンダーの裏等を利用することで、新しい紙を購入する必要もありません。
型を取る → 色を塗る → 切り出す → 貼り合わせる
と、複数の工程があり、分担しながら、その方に合った作業をしてもらうこともできます。
こちらは、同じように、アジサイの花びらで作った作品です。皆さんの個性を合わせた作品が出来ました。
いかかでしたでしょうか?今回は、私が実際に行ってみて、利用者の方に人気のある脳トレを紹介しました。現場で働く皆さんも、様々な工夫をしながらレクリエーションを提供していることと思います。こんなレクリエーションも楽しめるよ。というものがあれば、是非、教えて下さい。